34.函館本線山線 ニセコ駅で途中下車して秘湯を満喫

函館本線山線 ニセコ駅で途中下車して秘湯を満喫

函館本線の長万部-札幌間は、室蘭本線・千歳線を経由するルートがメインになっていて、海線と呼ばれています。特急列車はすべてこちらのルートを通ります。
一方、本来の函館本線はニセコ、小樽を経由するルートで山線と呼ばれていますが、今は完全なローカル線と化しています。

噴火湾沿いに走る海線の車窓も素晴らしいのですが、長万部から小樽へ向かう急こう配の峠を喘ぎながら上っていくキハ40の振動に揺られ原生林を抜けていく山線は、北海道らしさを満喫することができます。
そんな山線ですが、ニセコ駅が近くなると、外国人観光客が多く乗り込み、英語の案内放送も行われるなど、わずか2両編成のキハ40の車内が一気に明るく国際色豊かになります。

そのまま山線に乗り続けて、余市、小樽方面へ向かうのもいいのですが、ニセコは良質な温泉が点在していることでも有名で、時間があればぜひ途中下車して上質の湯、秘湯感たっぷりの露天風呂を満喫したいものです。

ニセコ町とお隣の蘭越町、そして倶知安町を含めた一体の温泉はニセコ温泉郷と呼ばれていて、郷内には十数もの温泉があります。温泉巡りには車があった方が便利なことは間違いないのですが、ニセコ駅から出ているバス(行先によっては季節限定運行)を利用しても、秘湯を2つや3つ回ることができますので、いくつか紹介したいと思います。

ニセコ昆布温泉
ニセコ駅からバスで25分ほどの昆布温泉には5軒のホテル・旅館があり、いずれも日帰り入浴を受け付けています。そのうちの2つに行ってみました。

ホテル甘露の森
ロビーやレストランだけでなく、浴室・脱衣場を含めて広くて綺麗なホテルです。
それゆえ、秘湯感はありませんが、全面ガラス張りの開放感たっぷりの大浴場、眺望のある露天風呂はいずれも薄い緑色がかかった乳白色の優しいお湯で、ゆっくりと浸かっていることができます。
循環・塩素消毒はこの規模だと仕方がないのですが、あまりそういうことを感じさせないお湯でした。


広くてキレイな大浴場


大浴場のテラスのような場所に露天風呂が用意されている。

鯉川温泉旅館
ホテル甘露の森と同じニセコ昆布温泉内にあり、歩いても15分ほどの距離です。
こちらはホテル甘露の森とは施設面で対極にある温泉です。
古い木造の建物、きしみそうな廊下、浴室も脱衣場も昔のまま、特に内湯は明治32年の創業以来110年以上もの歴史を感じさせるものです。甘露の森よりもやや濃いめの緑色がかかった乳白色のお湯は、湯量・湯温ともたっぷり・十分で、もちろん源泉かけ流しです。小さな滝が脇を流れる露天風呂も最高です。
ニセコでいくつかお風呂に入りましたが、お湯だけで言えばこちらが一番よかったような気がします。
なお、2017年3月をもって宿泊営業を終了し、現在は日帰り入浴だけの営業です。


日本秘湯を守る会の宿だが、残念ながら今年の3月末をもって宿泊は止めてしまった。日帰り入浴は営業している。


歴史を感じさせる内湯。天井が非常に高い。


小さな滝を眺めながら入る露天風呂。お湯が素晴らしい。

ニセコ五色温泉
昆布温泉からさらにバスで45分、ニセコ駅からは約1時間15分の距離にあります。ニセコアンヌプリとイワオヌプリ間の凹地に挟まれた眺望の素晴らしい場所で、道路を挟んでニセコ五色温泉旅館とニセコ山の家の二つの旅館があります。
なお、バスは7月15日から10月15日の土日祝のみの運行(7月31日~8月31日までは毎日)なので注意が必要です。

ニセコ五色温泉旅館
かっての野趣満点の秘境感は失われていますが、この温泉の素晴らしさは地底から湧き出る湯量たっぷりの源泉かけ流しの湯と正面にニセコアンププリやイワオヌプリを望む抜群の景観を楽しめる「からまつの湯」の露天風呂です。
浴室は「からまつの湯」の他にもう一つ「大浴場」がありますが、いずれも硫黄臭はあるものの透明度の高いなめらかで肌にしっとりくるお湯です。
もちろん日帰り入浴も可能ですが、できれば宿泊をおすすめします。
正面のニセコアンププリやイワオヌプリから上がる朝日が眩しいくらいに露天風呂に差し込み、湯船のお湯がきらりゆらりと波打つ中に身体を沈めるという宿泊客だけにしか味わえない至福の時間を満喫することができます。


正面の山から朝日が昇ってきた。


その朝日がからまつの湯の露天風呂に差し込み、お湯がゆらりキラリと波打っている。

ニセコ新見温泉
こちらはバスが通っておらず、また最寄駅はニセコ駅ではなく蘭越駅になります。蘭越駅から急な上りをタクシーで15分ほど走った場所にあります。以前は新見本館と新見温泉ホテルの2軒の旅館があったのですが、いずれも2016年3月に廃業しています。
このうち新見本館は経営が変わって2017年1月に再開しましたが、2017年7月から老朽化した建物改修のため休館になっているようです。

ホテル新見本館
廃業する前に伺いました。
100年の歴史がある温泉旅館で、北海道ではもっとも古い旅館のひとつだそうです。
他のニセコのお湯と異なり無色透明、飲用にもなる湯ですが、温泉の成分は非常に濃いとのことで、旅館の主がその理由をとうとうと説明してくれました。
いずれにしても、こちらが素晴らしいのは混浴の露天風呂です。豊富で高温の源泉かけ流しのお湯が惜しげもなく流れ、奥ニセコの山々がパノラマのように望めます。これほど開放感のある露天風呂もそうないと思います。

経営が変わった営業再開後の状況をFacebookの情報等から見てみると、廃業前とは様子が変わっているようです。
まず、ロビーなどはリニューアルされ、入浴券の販売も自販機になっています。そして、開放感たっぷりだった混浴露天風呂には仕切りが設けられ男女別に変わって、開放感が薄れてしまったようです。また、風情たっぷりだったもう一つの浴室(内湯と蒸しサウナ)も使われていないようです。

行政の規制等色々事情があるのは分かりますが、秘湯感たっぷりの趣が失われていくのは残念でなりません。現在老朽化した施設の改修のため休館中とのことですが、改修後は快適さはアップするものの、秘湯感は失われていくんでしょうね。行政の規制や経営上の理由等色々事情があるのは分かりますが、残念でなりません。


雄大な眺望(素晴らしい借景である。)の開放感満点の露天風呂


建物の中に内湯があるのだが、この岩の部分に仕切りを作って露天風呂を男女別にしてしまったらしい。

 

ニセコ湯めぐりパス

ニセコの温泉を最大4箇所利用できるパスで、複数人での利用も可能です。2016年10月に大リニューアルされて、対象施設も増えました。1枚2,160円ですから一人で4箇所、二人なら2箇所回るならお得です。有効期間も180日あります。
詳細は ⇒ こちら

33.かつて日本一の赤字路線だった美幸線の今

かつて日本一の赤字路線だった美幸線の今

かつて、国鉄時代に「日本一の赤字線」と言われたのが美幸線です。

北海道中川郡美深町にある宗谷本線の美深駅から同町内の仁宇布駅までを結んでいた全長21.2㎞の路線ですが、廃止前年の1984年(昭和59年)度の営業係数は4,731、要するに100円稼ぐのに4,731円の費用がかかるとんでもない赤字路線だったわけです。

結局、翌年の1985年(昭和60年)9月に廃止されたのですが、廃止後10年以上経った1998年(平成10年)からNPO法人「トロッコ王国美深」が廃線跡の一部を利用してエンジン付きトロッコを運行しています。
旧仁宇布駅を起点として、手前美深方面へ5㎞程の廃線を自分でエンジン付きトロッコを運転することができます。(運転する場合は免許証が必要)

人工的に整備された廃線跡はあまり興味を引かないのですが、ここは別です。かつての国鉄の路線、小さな鉄橋や踏み切りもそのままの線路の上を、そして林の中を往復30分ほどかけて走るのですから、鉄道ファンでなくてもたまらないと思います。
手漕ぎ、足こぎのトロッコは他でもあると思いますが、エンジン付きトロッコはここだけではないでしょうか。

旭川から車で約2時間、付近は携帯の電波も届かない場所もある、そんな不便な場所ですが、夏休みなどは2時間、3時間も待ちもあるそうです。

宗谷本線を利用して行く場合、最寄駅は特急も停車する美深ですが、路線バスがないため、美深町の仁宇布線デマンドバスを利用することになります。

<仁宇布線デマンドバス時刻表>
美深発仁宇布行き

仁宇布発美深行き

所要時間は約25分、運賃は550円です。


旧仁宇布駅がトロッコ王国の出発地点になっています。


こちらは旧駅舎ではなく、新たに建てられたものらしい。


サハネ581がなぜか保存されていました。国鉄からJR北海道に継承された何両かの1台だと思いますが、こちらに置かれている理由はわかりません。ただ、かなり傷んでおり保存状態は良くありませんでした。


旧仁宇布駅から真っ直ぐ伸びる美幸線の廃線跡


警報機のある踏切は宗谷本線と共用のものを除けば1箇所だけだったらしい美幸線、このような踏切が多かったんでしょうね。


小さな川に架かる鉄橋も渡ります。


しばらく走ると線路は林の中に入ります。この辺りは携帯の電波も入りません。


こちらがエンジン付きトロッコ。実際のスピードはともかく、低い車体なこともありかなりのスピード感を感じます。


折り返し地点には以前は転車台があったようですが、今は自走で折り返すことができるようになっています。

廃線のその後は、すべてが撤去される場合もあれば、朽ち行くままに放置されるケースもありますが、美幸線のその後は恵まれた第二の人生と言えるのでしょう。