33.かつて日本一の赤字路線だった美幸線の今

かつて日本一の赤字路線だった美幸線の今

かつて、国鉄時代に「日本一の赤字線」と言われたのが美幸線です。

北海道中川郡美深町にある宗谷本線の美深駅から同町内の仁宇布駅までを結んでいた全長21.2㎞の路線ですが、廃止前年の1984年(昭和59年)度の営業係数は4,731、要するに100円稼ぐのに4,731円の費用がかかるとんでもない赤字路線だったわけです。

結局、翌年の1985年(昭和60年)9月に廃止されたのですが、廃止後10年以上経った1998年(平成10年)からNPO法人「トロッコ王国美深」が廃線跡の一部を利用してエンジン付きトロッコを運行しています。
旧仁宇布駅を起点として、手前美深方面へ5㎞程の廃線を自分でエンジン付きトロッコを運転することができます。(運転する場合は免許証が必要)

人工的に整備された廃線跡はあまり興味を引かないのですが、ここは別です。かつての国鉄の路線、小さな鉄橋や踏み切りもそのままの線路の上を、そして林の中を往復30分ほどかけて走るのですから、鉄道ファンでなくてもたまらないと思います。
手漕ぎ、足こぎのトロッコは他でもあると思いますが、エンジン付きトロッコはここだけではないでしょうか。

旭川から車で約2時間、付近は携帯の電波も届かない場所もある、そんな不便な場所ですが、夏休みなどは2時間、3時間も待ちもあるそうです。

宗谷本線を利用して行く場合、最寄駅は特急も停車する美深ですが、路線バスがないため、美深町の仁宇布線デマンドバスを利用することになります。

<仁宇布線デマンドバス時刻表>
美深発仁宇布行き

仁宇布発美深行き

所要時間は約25分、運賃は550円です。


旧仁宇布駅がトロッコ王国の出発地点になっています。


こちらは旧駅舎ではなく、新たに建てられたものらしい。


サハネ581がなぜか保存されていました。国鉄からJR北海道に継承された何両かの1台だと思いますが、こちらに置かれている理由はわかりません。ただ、かなり傷んでおり保存状態は良くありませんでした。


旧仁宇布駅から真っ直ぐ伸びる美幸線の廃線跡


警報機のある踏切は宗谷本線と共用のものを除けば1箇所だけだったらしい美幸線、このような踏切が多かったんでしょうね。


小さな川に架かる鉄橋も渡ります。


しばらく走ると線路は林の中に入ります。この辺りは携帯の電波も入りません。


こちらがエンジン付きトロッコ。実際のスピードはともかく、低い車体なこともありかなりのスピード感を感じます。


折り返し地点には以前は転車台があったようですが、今は自走で折り返すことができるようになっています。

廃線のその後は、すべてが撤去される場合もあれば、朽ち行くままに放置されるケースもありますが、美幸線のその後は恵まれた第二の人生と言えるのでしょう。

 

 

 

32.北海道 訪ねてみたい鉄道遺産② 三菱大夕張鉄道保存車両

三菱大夕張鉄道保存車両

現在夕張の街を走る鉄道はJR夕張線(石勝線夕張支線)のみとなってしまい、この夕張線も近い将来廃止が予定されています。
しかし、炭鉱の街として栄えた夕張にはかって、4つの鉄道が走っていました。
JR夕張線、夕張鉄道(昭和50年廃止)、真谷地鉄道(昭和62年廃止)、大夕張鉄道(昭和62年廃止)です。

おおまかですがこんなイメージです。

このうち大夕張鉄道(正式名称は三菱石炭鉱業大夕張鉄道線)はJR夕張線の清水沢駅と大夕張炭鉱山駅を結んでいたのですが、当時の車両が途中の南大夕張駅跡に保存されています。

鉄道廃止後荒れ果てるままなっていた車両を夕張市民や鉄道出身者などで構成される「三菱大夕張鉄道保存会」が修復活動を開始し、現在は車両だけでなくホームの補修も進み、いい保存状態で客車や石炭貨車などの鉄道車両を見ることができます。

車がないと行けない不便な場所にあるのですが、ぜひ行って見ていただきたい鉄道遺産です。

 

 

保存されている車両


保存車両の目玉と言えるのがキ100形式キ1。なんとなくウルトラQに出てきたケムール人に似ている気がします。


事業用貨車。いわゆるラッセル式雪かき車です。


スハニ6形客車


中も綺麗な状態に修復され、自由に入ることができます。


オハ1と手前がナハフ1。ナハフ1だけは保存状態が良くないのか中には入れず。


セキ1形貨車(石炭車)。客車・貨車とも三菱のスリーダイヤモンドのマークが入っている。


敷地内には三菱炭鉱のバスも保存されていました。


ホームの補修も進めているようすが、費用的な問題も多いようです。

「消えた鉄道を行く」<汽笛が響いた街 夕張>
NHKで平成9年(1997年)に放送された「消えた鉄道を歩く」<汽笛が響いた街 夕張>で、当時の南大夕張駅跡と保存されている車両が紹介されています。
案内役が中山忍で、廃線の説明役として宮脇俊三氏が登場しています。最近、NHKのBSプレミアムカフェで再放送されたのでご覧になった方も多いと思いますが、映像で見る当時の保存車両は荒れ果てた状態です。
「三菱大夕張鉄道保存会」が発足したのはこの放映2年後の平成11年(1999年)ですから、それから地道な補修活動が始まったことになります。
我々が支援としてできることはまず寄付が思い浮かびますが、現地に赴き、実際に自分の目で見ることも大きな支援になるのではないでしょうか。