30.北海道 訪ねてみたい鉄道遺産① 間もなく見れなくなるタウシュベツ川橋梁

間もなく見れなくなるタウシュベツ川橋梁


昭和14年に旧国鉄士幌線が十勝三股駅まで開通した際にタウシュベツ川に架けられた橋梁です。
その後、昭和30年に人造ダム湖である糠平ダムが建設され、橋梁周辺が湖底に沈むことになり、士幌線も新線に切り替えられました。その際に、線路は撤去されたものの、橋梁自体はそのまま残され、60年以上もの年月が経過しています。

タウシュベツ川橋梁を有名にし、訪れる人も絶えないのは、糠平湖の水かさが増える6月頃から湖面に沈み始め、8月頃には完全に湖底に姿を消してしまい、水かさが減る1月頃から凍結した湖面に再び姿を現すため、幻の橋といわれているからです。(糠平湖の水量は年によって差があり、私が訪問した際には9月中旬でもその姿を湖面に現していました。NPOひがし大雪自然ガイドセンターのHPで、タウシュベツ川橋梁の状況を随時写真で紹介しています。)

現在、この幻の橋であるタウシュベツ川橋梁が永久に幻の橋となる危機に瀕しています。
60年以上もの間、水没中に水圧を受け、さらには過酷な気象条件の中凍結・解凍を繰り返す氷の圧力から橋の損傷は激しく、橋の崩壊は時間の問題と言われているからです。

旧士幌線にはこのタウシュベツ川橋梁のほかにもいくつものコンクリート造りのアーチ橋が残されており、古代ローマ時代の水道橋を思わせる姿を見ることができます。これら橋梁群は平成13年に「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」として第1回北海道遺産に選定されていますが、タウシュベツ川橋梁はその立地の悪さから、保存措置の対象外とされています。
NPOひがし大雪自然ガイドセンターの方にお聞きすると、あくまで個人的な意見としつつ「補修し保存したいという強い声もあるが、費用面で極めて厳しい。むしろ保存措置など行わずあるがままに朽ち行く姿を静かに見守るというという方が望ましいのかもしれない。」とのことでした。

タウシュベツ川橋梁を見学する方法はいくつかあります。
国道273号線沿いに設けられた「展望広場」から遠く望む方法の場合は特に手続等は不要ですが、間近で橋を見る場合には、次のような方法があります。(国道からタウシュベツ川橋梁に通じる林道は一般車両の通行が規制されています。)

  1. ひがし大雪自然ガイドセンター主催の「アーチ橋見学ツアー」を利用する。
  2. 国道273号線からタウシュベツ川橋梁までの林道4kmを徒歩で行く。
  3. 道森林管理局十勝西部森林管理署東大雪支署に事前申請の上、林道のゲートの鍵を借りて、車で通行する。

個人で行く場合、2か3の方法になりますが、この辺りはヒグマが頻繁に出没し、実際に看板に残されたヒグマの爪痕などを見ると2は安全上の問題からもおすすめできません。
3の方法ならマイカーで行くことができるのですが、事前申請という手続き面の煩雑さや、幅員4m弱の砂利道で路面状況が悪いという林道を走ることを考えると、1がおすすめです。実際に私は1を利用したのですが、タウシュベツ川橋梁だけでなく旧幌加駅跡なども専用車で案内していただけ、ガイドの方の色々な話も聞くことができます。

一度訪問した場所を再度訪問するということはあまりしないのですが、このタウシュベツ川橋梁に関しては、氷結した湖面から姿を現す真っ白な冬の時期にまた訪れてみたいと思っています。

おトクな「ぬかびら温泉郷バスパック」
ひがし大雪自然ガイドセンター主催のツアーに参加する場合でも、その出発地点であるぬかびらへのアクセスはマイカーかレンタカーが一般的ですが、帯広から往復バスを利用する場合におトクな「ぬかびら温泉郷バスパック」が発売されています。
パック内容は、

  • 帯広駅-ぬかびら間 往復バス乗車券
  • 温泉入浴券(ぬかびら温泉郷の7つの宿から1か所日帰り入浴ができる。)
  • 施設利用券(大人1,000円分、小人500円分で、ぬかびらの土産物店やレストラン、ひがし大雪自然ガイドセンター主催のツアーの料金にも利用できます。)

料金は、大人2,700円、小人1,350円で、7日間有効です。バスは一日4往復出ています。

詳しくはこちら「2017 ぬかびら源泉郷バスパック」

 


タウシュベツ川橋梁へつながる林道のゲート。森林管理署から借りた鍵がないと開けことはできません。


ヒグマ出没の看板があるちょっとした広場で車を降り、ここからは徒歩で向かいます。看板の右側に見えるへこみは、ヒグマの爪痕だそうです。


ほんの数分も歩けば視界が開け、タウシュベツ湖が見えてきました。正面に小さく見えるのがタウシュベツ川橋梁ですが、


カメラをズームアップしても本当にこの橋の上を機関車が走っていたのかと思うほどの狭いものです。


しかし、湖畔に近づき回り込むと、写真で見た通りのちょっと日本ではないような湖面に浮かぶ橋梁が目に飛び込んで来ました。


めがね橋の姿は湖面の穏やかな午前に見れることが多いそうですが、この日のように午後遅い時間でも見れることはあります。
タウシュベツ川橋梁が季節や湖の水位によって様々な姿を我々の前に現してくれるのはもうそんなに長くないかもしれません。

実は、タウシュベツ川橋梁を見る方法がもう一つあります。タウシュベツ展望台です。国道273号をぬかびら源泉郷から旭川方面に8km進んだ地点に駐車帯があり、そこから林の中を200メートルほど歩くことで辿り着くことが出来ます。熊出没注意の看板があり、ちょっと不安な気分になりますが、遠く(約750メートル)から眺めるタウシュベツ川橋梁もなかなかいいものです。


朝早い時間でしたが、幻想的な景色を見ることができました。

(訪問日:2014年9月)

29.北海道内 廃止線区・区間一覧

北海道内 廃止線区・区間一覧

2016年12月5日に留萌本線の留萌-増毛間が廃止になって、8か月が経ちます。

その後もいくつもの駅が廃止になっていますが、駅だけでなく線区そのものが今後どんどん廃止されそうなのがJR北海道の現状です。

これまでに廃止された北海道の国鉄・JRの線区・区間をまとめてみました。


廃止1年前の留萌本線増毛駅

1970年代

線名 区 間 営業距離数 最終運行日
胆 振 線 京極-脇方 7.5㎞ 1970.10.31
根 北 線 斜里-越川 12.8㎞ 1970.11.30
札 沼 線 新十津川-石狩沼田 34.9㎞ 1972.6.18
函館本線 美唄-南美唄 3.0㎞ 1973.9.8
千 歳 線 (旧)上野幌-東札幌 9.3㎞ 1973.9.9
函館本線 東札幌-月寒 2.8㎞ 1976.9.30
函館本線 桑園-札幌市場 1.6㎞ 1978.10.1
函館本線 近文-旭川大町 2.9㎞ 1978.10.1

1980年代前半(1980年~1985年)

線名 区 間 営業距離数 最終運行日
夕 張 線 紅葉山-登川 7.6㎞ 1981.6.30
白 糠 線 白糠-北進 33.1㎞ 1983.10.22
万 字 線 志文-万字炭山 23.8㎞ 1985.3.31
渚 滑 線 渚滑-北見滝ノ上 34.3㎞ 1985.3.31
相 生 線 美幌-北見相生 36.8㎞ 1985.3.31
岩 内 線 小沢-岩内 14.9㎞ 1985.6.30
興浜北線 浜頓別-北見枝幸 30.4㎞ 1985.6.30
興浜南線 興部-雄武 19.9㎞ 1985.7.14
美 幸 線 美深-仁宇布 21.2㎞ 1985.9.16
手 宮 線 南小樽-手宮 2.8㎞ 1985.11.4

1980年代後半(1986年~1989年)

線名 区 間 営業距離数 最終運行日
胆 振 線 倶知安-伊達紋別 83.0㎞ 1986.10.31
富 内 線 鵡川-日高町 82.5㎞ 1986.10.31
広 尾 線 帯広-広尾 84.0㎞ 1987.2.1
瀬 棚 線 国縫-瀬棚 48.4㎞ 1987.3.15
湧 網 線 中湧別-網走 89.8㎞ 1987.3.19
士 幌 線 帯広-十勝三股 78.3㎞ 1987.3.22
羽 幌 線 留萌-幌延 141.1㎞ 1987.3.29
幌 内 線 岩見沢-幾春別 18.1㎞ 1987.7.12
松 前 線 木古内-松前 50.8㎞ 1988.1.31
歌志内線 砂川-歌志内 14.5㎞ 1988.4.24
標 津 線 標茶-根室標津 69.4㎞ 1989.4.29
標 津 線 厚床-中標津 47.5㎞ 1989.4.29
名寄本線 湧別-中湧別 4.9㎞ 1989.4.30
天 北 線 南稚内-音威子府 148.9㎞ 1989.4.30
名寄本線 名寄-遠軽 138.1㎞ 1989.4.30
池 北 線 池田-北見 140.0㎞ 1989.6.3

1990年代

線名 区 間 営業距離数 最終運行日
函館本線
(上砂川支線)
砂川-上砂川       7.3㎞ 1994.5.3
深 名 線 深川-名寄 121.8.㎞ 1995.9.3

2000年以降

線名 区 間 営業距離数 最終運行日
江 差 線 木古内-江差 42.1㎞ 2014.5.11
留萌本線 留萌-増毛 16.7㎞ 2016.12.4